著書:ほんとうの琉球の歴史

 

 沖縄は、現在日本国の一県として位置づけられていますが、かつては琉球(りゅうきゅう)王国という独立国家でした。さらに遡れば、日本最古の化石人骨が出土していることからもわかるように、何万年という気が遠くなるほどの長い時間を、何百代、何千代もの世代を数えながら人が暮らし、歴史を育んできた古い土地です。

 本来であれば、世界有数の豊かな歴史を持つ国として、その名を知られるべき土地なのです。

 残念なことに、今は当の琉球人でさえ、そのことをしっかりと認識しているとは言えません。それどころかあまりにいい加減な歴史が「史実」としてまかり通ってきました。

 その最たるものは、琉球で最初に按司(あじ)から王と名乗った瞬天王(しゅんてんおう)が源 為朝(みなもとのためとも)の息子であるとする「為朝伝説」でしょう。

 これは、第二尚氏(しょうし)時代に琉球国の正史として編纂された『中山世鑑(ちゅうざんせいかん)』に採られている説ですが、つい最近まであたかも史実であるかのように扱われ、学校でも当たり前に教えられていました。

 現在の教科書では、さすがに「あくまでも伝説である」と但し書きをするようになっていますが、民間で歴史を研究している方には、いまだ為朝伝説が史実か、史実に近い伝承だと思い込んでおられる方が多いのが現状です。私は、故郷を愛する一琉球人として、こうした状況に常々強い不満を感じてきました。

 一方、アカデミズムの場で沖縄の歴史を研究している学者たちはどうでしょうか。こちらも残念ながら、沖縄の歴史を十分に解き明かしているとは言えないような状況です。彼らは、文献にこだわるあまり、沖縄のあちこちに埋もれたままになっている遺跡や伝承をきちんと拾いきれずにいるのです。

 詳しいことは本文でお話したいと思っていますが、「正史」とされる文献を鵜呑みにしたり、民間伝承や遺跡を調査せずに作られた「歴史」がまかり通っていることにがまんできず、今回、僭越ながら「琉球の正しい歴史」を書き残そうと筆を執ることにしました。

 ところで、歴史学者でもない一市井人である私が、なぜ正しい歴史を知っていると言い切れるのかと不審に思う方もいらっしゃるでしょう。

 これに対して、私は「歴史上の当事者たちから、直接真実を聞いたから」と答えるほか、術を持っていません。本書でお話しすることは、すべて神人(かみんちゅ)である私が、自分の活動を通して知り得たことなのです。そう言うと、「なんだユタ物言いか」と思われる方がいるかもしれません。ですが、一度騙されたつもりでページを捲ってみていただけませんでしょうか。私が言わんとしていることが、必ずしも根拠のない話ではないことがわかっていただけるものと思います。

 また、本書では、琉球史に馴染みのない方にもわかりやすいよう、一般的に「正しい」とされている琉球の歴史を併記し、主な登場人物の系譜と年表も記載してあります。さらには私が「真実」を知るきっかけになった不思議な出来事の数々も書いていくつもりでおります。

 多くの方々が、私たち琉球人の先祖があの世から語りかけている琉球の真実に耳を傾けてくださることを祈りつつ。

 

                                          渡久地 十美子